限定版19AQ5 単管ヘッドフォンアンプ製作

 ある日、春日無線変圧器さんを訪れると19AQ5の作者のかたがいらっしゃった。何気なくお話を伺っているときに「これもう試聴した?」と聞かれ、なんだろうと見てみると見たことのないアンプが置いてありました。「是非試聴してみて」と言われ、よくみるとシャーシも大きく、カッコイイ。ヘッドフォンジャックもあり、ヘッドフォンアンプらしい。

 早速試聴してみましたら、おおぉ、中低域がしっかりと出ているではないか。それに全体の音もしっかりとしている。よ〜くみると「限定版19AQ5単管ヘッドフォンアンプ 予約受付中 完成品\xx,xxxx円」と書かれている。話を良く聞くと、パーツセットが限定30セット出るらしい。店長さんに「あれ案内行っていない?」と聞かれ「来ていないです」と話すと「じゃぁ予約しておきますよ」と私の心の中を読まれている。するどい…。欲しいと思ったその気持ちが会話や表情に出ていたのだろう。でも、本当に欲しいと思ったのでした。

 オリジナルと限定版の仕様の違いは
  ・電源トランスの容量アップ
  ・特別仕様の出力トランス
  ・入力トランスも違う
  ・アルマイト仕上げの硬質特注シャーシ
  ・交換用LEDが3種類入っている(緑、赤外線、青)
  ・シャーシは穴開け済み
  ・etc.
 これはもうだめ、見た感じに思いっ切り引きつけられてえしまいましたし、もう購入のための算段を心の中でしていました。このシャーシ、スペースにも余裕がある、それに背面パネルにはいっぱい穴が開いている。そうだスピーカに出力するための端子も容易に付けられそうだ。内部にもパーツの追加が容易にできそうだと思った次第です。

 販売の日は1月下旬とのこと、それまでが待ち遠しく感じられました。そして、販売日が決定し、1月20日に仕事帰りに春日無線変圧器さんに立ち寄り、パーツセットを受け取って帰ってきました。この日がとても待ち遠しく、楽しみでもありました。いよいよ翌日は製作だと思いながら帰りの電車の中でワクワクしていた次第です。

限定版19AQ5単管ヘッドフォンアンプの箱
 春日無線変圧器さんで受け取ってきた限定版19AQ5単管ヘッドフォンアンプパーツセットの箱です。電車の中で中のパーツを想像しながら大事に持って帰ってきました。製作するのは翌日の土曜日。その日は箱も開けずに我慢しました。
パーツ類1
 箱から取り出したパーツです。シャーシ、CR類、配線材、真空管、トランスと説明書が入っています。シャーシは白い保護フィルムが貼られていました。上カバーのシートは最後に剥がすとして、それ以外は早速剥がすことになります。
パーツ類2
 ビス類、CR類、真空管、配線材、LEDなどが整然と袋詰めされています。ワクワクします。VRのツマミもアルミ削りだしの高価なツマミです。
改造用パーツ
 既に改造用のパーツを購入済み。いくつかの改造プランがありましたので、そのパーツも揃えておきました。これはヒータ電圧切替時の抵抗とカソードのパスコンなどです。その他にも、切替SW付きヘッドフォンジャック、ロータリーSW、スナップSWなども購入済みです。
シャーシ1
 シャーシの上カバーを外してみました。真空管が載る部分のシャーシと下部シャーシとは分離できるタイプです。
電源トランスと出力トランス
 パワーアップされた電源トランスと特注出力トランスです。電源トランスはヒータ捲線が630mA、高圧捲線は125Vと150Vで50mAです。そう、電源強化バージョンで使ったトランスはこの電源トランスなのです。
 出力トランスは一見するとオリジナルとの違いが判りませんが、よ〜くみるとOUT-41-357Sとなっていて最後に「S」が付いています。限定版のために特注された出力トランスなのです。
真空管シャーシ部の改造
 真空管が載るシャーシ部に1個穴開けをしました。この穴はカソードLEDの個数をを変えるためのSWが付きます。始めはシャーシ後部の穴を利用しようと思ったのですが、カソードからの配線が長くなりノイズを嫌ったため真空管ソケットの側に配置することにしました。;
シャーシ後部の穴の加工
 シャーシ後部の穴開けされている部部の加工をしました。小さな赤丸の部分はロータリーSWの滑り止めピン用。そして4つの穴の径をやや大きくしました。これはスピーカ端子を取り付けるためです。
ヘッドフォンジャック部の穴を拡大
 前面のヘッドフォンジャックの穴の径も大きくしました。これは切替SW付きのヘッドフォンジャックを絶縁型で用意していたので、径が大きくないと入らなかったためです。
真空管ソケット部
 先ずは、真空管部のシャーシから作業を始めました。MT7のソケット、LED取り付け用のラグ端子、LED個数切替SW、LEDを取り付け、配線を済ませました。線材はLANケーブルの10Base-Tカテゴリ5をバラして使用しています。
入力トランス取り付け部
 入力トランスを配置するラグ端子を取り付けます。この位置は真空管シャーシの真空管の背面にあたります。
入力トランス取り付け
 入力トランスを取り付けます。リード線は良く捩ります。このあたりはオリジナルと差はありません。
ヒータ、プレート、SGの配線
 ヒータ回路の配線とプレート、SGの配線を行います。そしてアース配線のためのすすメッキ線を配線します。配線後に電源SWとVRを取り付けました。今回もヒータ電圧を切り替えるようにするためにちょっと変則的な配線の出し方にしています。プレート、SGからの配線はすこし長めにすることにしました。何かの改造の為にこのシャーシを外すときに配線が短いと一旦半田付けを外さなくてはならなくなるためです。短い方がノイズ、音質などには有利なのですが…。
入出力の配線
 大分配線が進んでいます。入力トランスからVRへ、VRからグリッドへ、ヘッドフォンジャックの配線を済ませます。ここで問題が発覚。事前に購入して準備をしていたヘッドフォンジャックなのですが、SW付きではあったのですが、切り替えられるSWではなくオン-オフのSWでした。う〜ん、これではシャント抵抗を切り離すようにできない。パーツは改めて購入仕直さなくてはなりません。仕方ないのでヘッドフォン出力のみの配線とし、シャント抵抗は出力トランスに取り付けることにしました。
出力トランスと平滑部の取り付け
 下部シャーシに出力トランスの取り付けと、電源平滑部の取り付けと配線を行いました。高圧を125Vと150Vを切り替えて使用するようにしていたので、電解コンデンサの耐圧は250Vの物です。最終段の電解コンデンサは100μFを2個並列にしてあります。
ゴム足
 当初の予定ではゴム足は付かない予定だったそうなのですが、付けた方がいいということになってゴム足が付いていました。でも、穴はと下部シャーシをみるとそれらしい穴はありません。両面テープで貼り付けることにしました。
下部シャーシにゴム足取り付け
 下部シャーシにゴム足を取り付けました。三点支持にしようかとも思いましたが、オーソドックスな四点支持にしました。
電源トランスとヒータ切替SW
 電源トランスの取り付け、ヒータ電圧切替SW、高圧電圧切替SWの取り付けをして、配線を済ませます。使用したロータリーSWが小さいので、配線がやりにくかったですが、なんとか間違わずに配線することができました。
平滑部への高圧の配線
 高圧から電源平滑部への配せんを済ませました。平滑部はオリジナルと同じですが、シャーシに余裕があるためラグ端子の間隔が若干広くなっています。その為、電解コンデンサの取り付けも楽でした。
真空管シャーシの取り付け
 入力トランスへ入力端子から配線を行いました。この線材もLANケーブルです。本当は最短で配線をするのがいいのですが、取り外しを考えて長めのままです。
 また、この配線をするにあたって真空管シャーシを下部シャーシに取り付けました。その際にはヘッドフォンジャックからの配線とプレート、SGからの配線を出力トランスに行います。
配線完了1
 配線がほぼ終了しました。シャーシを右横から見た写真です。空間はいっぱいありますが、真空管シャーシ下部は余裕が殆どありません。
 配線が終了したので、各部の電圧を測り問題が無いことを確認して真空管をソケットに取り付けました。
配線完了2
 シャーシを左横から見た写真です。ヘッドフォンジャックからの配線はいまのところシンプルに終わっていますが、今後、スピーカ出力と切り替えるようにするともっと配線が混み合ってくると思います。
真空管を取り付け
  まずは、真空管をソケットに取り付けました。取り付けた真空管は6AG5。ヒータ電圧の切替が上手く行くかは6.3V管で試すことで判りますので。12.6V管と19V管は並列なので、球を挿さないでも簡単に判断できますが、6.3V管と4.7V管は直列の配線なので、真空管をさして電圧を測定するのが判りやすいのです。今回は今までと違い、ロータリーSW(ノンショートタイプ)で切り替える回路に変更しています。ただ弱点はロータリーSWの接点容量が0.15Aしかありません。まぁ、動作中に切り替えないので、何とか持ってくれるのではと甘い判断をしています。それもあるので、高価な6AQ5ではなく100円で購入した6AG5で確かめます。
完成して背面の写真
 電圧の確認、ヒータ電圧の切替の確認が済みましたので、上カバーを取り付けてみました。そして後部の写真です。入力端子、スピーカ端子、電圧切替SWが付いています。ロータリSWに使ったツマミはニュー秋葉原センターの小澤電気さんで購入したツマミです。1個100円でした。
完成!!
 完成して正面から撮った写真です。まだ前面のアクリルカバーは取り付けていませんが、いずれ取り付けようと思っています。いまは、いろいろな球を差し替えてみたいので、取り付けていません。
完成後第1段の改造
 完成後に早速改造が入りました。先にも書きましたが、カソードLEDにパスコンを取り付けてみました。取り付けたのはOSコンで220μF/20Vです。100μFも試してみましたが、220μFの時が私のヘッドフォンには結果として良かったので220μFにしました。
初段のOPAMP化
 第2段の改造です。これは電源強化バージンでも同じOPAMPの回路にして実験をしたものです。回路の違いはありませんが、使用したユニバーサル基板が紙エポキシから硝子エポキシに変えました。このことによる音の変化は少ないですが、配線はとてもやり易かったです。また使用した入出力のカップリングコンデンサはメタライズドフィルムコンデンサの0.22μFです。
 OPAMP化しての第一印象は低域がズバッとでること。これは強化バージョンでも同じ印象でしたが、入力トランスとの一番の違いでした。でも、ブーミーな出方でもなくOPAMPのキャラクターでもなく、嫌味のない低域の出方でした。ノイズも皆無です。
ヘッドフォンジャックの配線
 ヘッドフォンジャックを買ってきました。シャント抵抗が切り替えられるようになりましたので、シャント抵抗を出力トランスから外しヘッドフォンジャック部に配線します。そして、出力トランスの8Ω端子からヘッドフォンジャックへ、ヘッドフォンジャックからスピーカ端子への配線をします。
スピーカ端子の配線
 ヘッドフォンジャックからの配線を済ませました。さていよいよスピーカからの音出しです。接続したスピーカはCELESTIONのF30。このアンプからの出力は0.4W程度かなと思いますが、19AQ5を挿してVRを最大にするとそこそこちゃんと聴くことができました。
 ただ、この出力段はUL接続になっているものの、負帰還は無く、五極管として動作していますので、ダンピングファクターはそう高くなくスピーカからの低域はやや暴れている気がしました。それでも、歪みのない嫌味のない音を奏でてくれるので、寝るときなどには丁度いいと思えました。
改造も終わって一段落
 一通りの改造を終えた限定版19AQ5単管ヘッドフォンアンプです。VRのツマミは手持ちにあった物を使用しています。
 なんだかんだといっても19AQ5は良い音を出してくれます。エージングを充分に行うことでしっかりとした低域が出てきますし、なんら不満のない音になります。見た感じもいい感じなのです、この球。
 結局、オリジナル版、強化版、限定版版と3個のヘッドフォンアンプを手にすることになりましたが、実験などはこれからもいろいろとやってみたいと思います。
 前面に付属のアクリルパネルを付けてみました。なかなか格好いいですよ。左が電源オンの時、右が電源オフの時の様子です。これを付けると簡単には真空管の交換はできなくなりますが、ビス4つとVRツマミを外せばアクリルパネルは簡単に外せますので、真空管の交換ができるようになります。
平滑部の改造
 今日、仕事から帰ってきてメールを開くと作者の方から「平滑部のコンデンサをパラにするのは2段目の方が効果がある」というメッセージ。なるほど、と思いながらシャーシを開けて早速最終段を100μFパラにしていたのを2段目を100μFパラにしてみました。
 電源強化版で実証済みなのですが、限定版版はスピーカ出力でもどう変わるかをやってみましたら、なんと音量が少し大きくなり低域の締まりがよくなりました。ヘッドフォンと効果が若干違うのが面白いですね。
19AQ5<->EL91切替SW改造
 電源強化版に施した19AQ5とEL91を切替使用できるようにするSWですが、限定版にも付けることにしました。これでEL91でスピーカ出力ができるようになります。EL91でスピーカの音に今からワクワクしています。
 SWはバイアス切替SWの奥に配置したので、オリジナル版に使用したロックレバー方式ではなくノーマルのSWを使用しました。
 さて、実際にEL91でCELESTIONのF10を鳴らしてみると、ほほぉ〜、いいではないですか。まだまだエージング不足ではありますが、高域の整った音がでています。ただ、スピーカでは6AN5Wの方が迫力もあり、とても楽しめます。
回路図ですが、3台とも同じ回路です。
19AQ5<->6AU6切替SW
 19AQ5単管ヘッドフォンアンプで6AU6系、6CB6、6DK6、6AH6WA、5725、6BA6、6AK6など7MTのピン接続が7BK、7CM系の五極管の音も聴きたくなってきまして、改造を施してみました。改造は19AQ5<->EL91切替SW同様に簡単でして、19AQ5接続時に7ピンと2ピンをショートすることで、ピン接続が7BK、7CM系の五極管が使用できるようになります。回路図です。
 切替SWの穴を空ける場所が限られているので、右手前に配置しました。手前にSWが来るのでロック式を採用し、不用意にSWが切り替わってしまうことを防止します。この改造で6AU6系、6CB6、6DK6、6AH6WA、5725、6BA6、6AK6などが使用することができますので、更に広範囲な球種でヘッドフォンサウンドを楽しむことが出来るようになりました。
電源部の増強
 電源部のリプルフィルタの電解コンデンサの中段は250V100μFを2個パラにして200μFとしていましたが、後段部も250V100μFを2個パラにして200μFにしました。少しでも電源部に余裕ができればと思った次第です。
 効果ですが、低域の静けさが増したように思えます。特にベースなどが聴きやすくなった感じがして、増設をした効果が少しでも現れてよかったと思います。
 このコンデンサはニュー秋葉原センターにある小澤電気商会さんで1個189円で購入したものです。他ではこのような安い価格で購入することは出来ません。
OPAMGain切替SW
 限定版はスピーカ出力もできるようにしてあります。そして初段にはOPAMPを使用して約10dB程度増幅しています。しかしスピーカに出力するには若干Gain不足かなと感じていたのと、3極管接続をしたさいにGainが下がるので、その際にスピーカ出力の音量が小さくなってしまうこと、更に負帰還を掛けてみたいと思っているので、その分の目減りを補いたい為、初段のOPAMPの増幅度を10dBと16dBで切り替えられるようにしました。SWの表示は10dB時を0dBとしていますので、切替時を6dBアップとしています。
 6dBアップとしたのは、それ以上のGainにしてしまうとクリップしてしまうので、何度かカット&トライをして決定しました。
 改造した回路図はとてもシンプルです。増幅度を決定している2本の抵抗のウチの1本をSWで並列に抵抗を接続するようにしました。増設したSWは将来、負帰還をするときのために4回路2接点のSWを採用しました。
UL⇔3結切替SW
 限定版もUL⇔3結切替SWを増設しました。改造方法はオリジナル版とまったく同じで回路図も同じです。ただ、限定版の場合にはスピーカ出力時にも効果があると思われます。それは、真空管を3極管接続することで内部抵抗が下がりますから、ダンピングファクターが良くなるからです。
 3極管接続時のスピーカから出てくる低域は締まりがよくなり、とても聴きやすい低音になりました。まだ負帰還をかけていませんので、極端に改善されているとは思えませんが、出力トランスの低域特性も少し改善されているようです。
 このSWの配置なのですが、当初は左手前を考えていたのですが、ちょうどヘッドフォンジャックがあので配置が無理なことが判り、仕方なく右奥になりました。真空管がセットされているとSWの切替は出来ませんが、このSWの性格上、オペレーションは電源OFFで電源部の電解コンデンサが充分にディスチャージされていることが前提ですから、そう問題にもならないと思います。