newPCL86シングルアンプ製作

 秋葉原のラジオデパート3Fにあるサンエイ電機でとても安い真空管PCL86(14GW8)、この真空管はECL86(6GW8)のヒータ規格が300mA(おおよそ14.5V点火)管で、性能はECL86(6GW8)と同じ。購入当時、サンエイ電機では10本2000円だった(今は2500円)。この真空管のアンプを作りたいと思っていました。なかなか作ろうとしていませんでしたが、意を決して春日無線変圧器さんに赴き、newPCL86シングルアンプのパーツセットを購入してきました。

 このパーツセットは、アンプ製作に必要なパーツは全て揃っているし、価格もパーツを一つ一つ揃えるよりは安いのであります。購入したパーツセットはNEWバージョンのもので、出力トランスが新しくなっており、回路も若干変更になっていました。

 このパーツセットは多くのキットとは違い、シャーシには穴が開いていません(穴開け済みのパーツセットもあります)。自分で開けなくてはなりません。そのために必要な最大の工具はドリルでした。今後の事も考えリョービのMD-11Vの新品をオークションで購入しました。なかなか使い勝手がいいドリルです。

 このnewPCL86シングルアンプは出力の五極部が三極管接続となっており、出力も1Wそこそこですが、このアンプから出てくる音は、中低域から高域までとても豊かに出てきます。回路もシンプルで、製作しやすいのがいいですね。PCL86はまだまだ価格が高騰していませんから、予備に何本か購入するにも負担になりません。POLAMP以外のメーカーのPCL86は品数が少ないようで、かなり高騰しているようです。

穴あけ後
 ドリルで穴を開けたシャーシ。パーツセットの説明書に穴あけ寸法図が入っていましたが、そのレイアウトではなく、SP端子、入力端子を背面に移動。また、入力を2系統、SP端子も4Ω、8Ωを出力することとしたので、穴開け図も作り直しました。
パーツマウント1
 穴を開けたシャーシにソケット、ゴムブッシュを取り付けました。真空管ソケット用にクロムメッキのビスがあったのですが、間違えて黒のビスで取り付けてしまいました。見た目が悪いので、後で直しました。
トランス類の取り付け
 出力トランスと電源トランスを取り付けました。これらのトランスは伏せ型ではないため、シャーシの穴開けも楽でした。取り付けビスの穴と配線用の穴だけです。伏せ型だと大きな四角い穴を開けなくてはならないので…。
内部の部品取り付け
 シャーシ内部にチョークトランス、ブリッジダイオード、立ちラグ、ヒューズボックス、電源SW、ネオン管、電源ケーブルなどを取り付け、トランスからの配線を通しました。
 かなりスペースが空いているので、あとで改造などをするときに楽に行えそうです。
内部配線
 内部の配線を進めます。まずは、電源まわり、真空管ソケットにCR類、そしてアースバスライン、入力からの配線、出力トランスの配線を済ませます。
 ここで大きなミスをしてしまいました。ネオン管の配線をグイと曲げたときに、ネオン管ケース内の配線が断線してしまっていました。まだこの時点では気がついていませんが。
アースラインの完成
 配線を済ませていたと思っていたのですが、アースラインと真空管ソケットのセンターピンを配線していませんでしたので、配線を済ませました。この配線をすることで、ノイズ発生、発振を抑える効果があります。
完成したPCL86シングルアンプ
 完成したPCL86シングルアンプです。ネオン管の断線があるのですが、ちゃんと点灯していますね。しかし、時々消えるという現象が発生して、見直していたら断線していることがわかりまして、ネオン管ケースからネオン管内部を引きずり出して修正をしました。
PCL86
 PCL86(14GW8)はMT管内に電圧増幅部と電力増幅部が入った複合管です。とても緻密に製造されており、見ていても飽きが来ません。パーツセットのPCL86、サンエイ電機で購入したPCL86、共にポーランド製で、電極内部構造は同一でした。
ヒータ回路を改造
 完成したアンプに挿したのはサンエイ電機で購入したPCL86。電源を入れるとヒータが発光します。ぱぁーっと明るく光り、徐々に通常の明るさになります。とくに問題は無いのですが、見ていて気持ちのいいものでないので、ヒータ電源を整流し直流供給とし、パワーサーミスタで徐々に電流が流れるように変更をしました。これで、発光現象は抑えることができました。
完成したPCL86
 ヒータ回路の改造を済ませ、完成。さぁ、音出し。出てきた音は「ををっ!!! なんという心地良いのだろう」というのが第一印象。こんなに小さな出力トランスなのに、TU-879に負けない低域の迫力。出力はわずか1Wなのに、充分な音量。懐の深いアンプです。
 出力段は三極管接続、P-G帰還がほどこされており、低インピーダンスで出力トランスをドライブしているお陰ですね。次はPCL86の全段差動PPアンプを作ってみたいなと。
配線変更後その1
 PCL86アンプ内部の配線と部品のレイアウト変更、更に定数変更をしてみました。誤配線の有無を確認し、真空管を挿さない状態で電圧を測定。
 ほぼ正常であることが確認できたので、真空管を挿してダミーを接続して電源オン。iPodを再生しVRを徐々に上げていくと正常に増幅をしている。と思って、更にVRを上げるといきなり発振。あれ? 特定の位地(おおよそ2時〜3時くらい)になると発振する。原因不明。
配線変更後その2
 ドライブ部のカソードのバイパスコンデンサを外すと発信は止まる。でも電流帰還で増幅率が下がったことによる発振停止のようなので、根本原因を更に探す。
 VRからの配線を動かしてみると発振が停止する。でも、不安定。VRからの配線をシールドにしてみると発振が止まった。でも入力になにも接続をしないと発振してしまう。入力にソースを接続するとインピーダンスが低くなることで発振が止まるようだ。ひとまずこの状態で、翌日に持ち越し。
更に発振防止その1
 一日おいてよく配線と部品のレイアウトを見ると、出力部のPG帰還抵抗(1MΩ)とドライブ部のグリッドの配線がとても接近している。このような配線になってしまっていたことで寄生発振をしていたようだ。出力部のPG帰還抵抗をソケット上で最短で配置、あと出力部の3極管接続のプレートとスクリーングリッド間にパラスチック発振(寄生発振)止めの抵抗100Ωを入れた。
SWからVRの配線も引き離してみた
 入力SWからVRまでの配線でLRがクロスしていたので、引き離しクロスしないように変更をした。さてダミーを接続し、入力になにも接続をしない状態でオシロで測定をすると、VRをどの位地にしても発振はしなくなりました。
 今回レイアウト変更とともに行った定数変更は、
・カソードパスコン:100μF→220μF
・カップリングコンデンサ:0.047μF→0.1μF
・電源部:33μF→47μF(除く整流直後)
 しかし下手くそな配線だなぁと思うのでした。
ヒータ回路変更
 ヒータがフラッシュするのを軽減する回路を入れていましたが、ヒータをブリッジ整流していたので電源トランスの負担が大きくなっていました。ヒータがフラッシュするのは問題ないため、軽減回路を削除してヒータを交流点火に戻しました。
 そして、更にヒータバイアスを掛けるようにRchのカソードとヒータ捲線を接続しました。